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約数について

 二つの整数 N, M について、N= aM となる整数 a が存在するとき、NM倍数 (multiple) であるといい、MN約数 (divisor) であるという。
 N の約数の個数を d (N ) とかき、N の約数の和を σ(N ) とかく。なお、いずれの場合も、約数の中には 1 や N 自身を含む。

 たとえば、 σ(6)=6+3+2+1=12, σ(12)=12+6+4+3+2+1=28 など。また、 p素数ならば、 p の約数は 1 と p の2つしかない。よって、d (p )=2 , σ(p )=p +1 である。

 素因数分解の一意性から、 M, N が 1より大きな整数ならば、 M = p1f1p2f2...pkfk , N = p1e1p2e2...pkek, p1, p2, ..., pk は相異なる素数で e1, e2, ..., ek , f1, f2, ..., fk は負ではない整数、と一意に表せる(指数が 0 になるものは無視する)。よって、 NM の倍数ならば、 N=aM とかけ、 a, M はそれぞれ正の整数であるから、それぞれ素因数分解でき、 N の素因数分解はそれによって定まる。したがって、 N の素因数分解には 各 pifi 回以上現れることになる。すなわち、 fiei となる。
 逆に、 M = p1f1p2f2...pkfk , N = p1e1p2e2...pkek, p1, p2, ..., pk は相異なる素数で fiei ならば、 MN の約数であることはすぐに分かる。
 (ここで、素因数分解の一意性は重要である。もし素因数分解の一意性がなければ、 N の素因数分解が、上で言うところの N=aM から従うもののほかにもあるかも知れず、そのような N の素因数分解は M の素因数分解とは関係付けられなくなってしまうからである)

 したがって、 N = p1e1p2e2...pkek, p1, p2, ..., pk は相異なる素数で e1, e2, ..., ek は負ではない整数のとき、 N の約数はちょうど上記の形をしたものすべてとなることがわかる。

 よって、 d (N ) および σ(N ) について次のことが分かる。

 d (N )=(e1+1)(e2+1)...(ek+1), σ(N )=(p1e1+p1e1-1+...+1)(p2e2+p2e2-1+...+1)...(pkek+pkek-1+...+1).


 自分自身を除く約数の和が自分自身に等しくなる数は完全数 (perfect number) と呼ばれる。すなわち、σ(N )=2N となるとき、 N を完全数という。たとえば、 6=3+2+1, 28=14+7+4+2+1 などである。完全数の概念は古代ギリシアのピタゴラスにまで遡るといわれる。
 また、旧約聖書の「創世記」には「神は6日で世界を創造した」という記述があるが、これは 6 が完全数であることと結びついているとされる(その後、「7日目に休息した」という記述から、西洋では 7 こそが完全な数であり 6 は悪魔の数字とされるようになったとも言われるが、良く分からない)。

 紀元前には既にユークリッドによって 6, 28, 496, 8128 が完全数であることは知られていた。ユークリッドはまた、 2n-1 が素数(今日で言う、メルセンヌ素数である)ならば、 2n -1(2n-1)は完全数であることを示した。
 18世紀に入って、オイラーは偶数の完全数はユークリッドが示した形のものしかないことを証明した。したがって、偶数の完全数はメルセンヌ素数と一対一に対応する。
 メルセンヌ素数は無限に存在する(つまり、偶数の完全数は無限に存在する)と予想されているが、未だに解決されていない。

 奇数の完全数は存在するのだろうか。これはピタゴラスの時代には問題にされていたもので、数論における最古の未解決問題と言われている。

 ピタゴラスはまた、完全数と良く似た概念である友愛数という数を考えた。二つの数の組で、一方の約数の和(自分自身を除く)が、もう片方の約数の和(自分自身を除く)に等しいものである。ある人から「友人とは何ですか?」と開かれた時、「それはもうひとつの私です。たとえば 220 と 284 のようなものです」と答えたという。
 実際、220=22*5*11, 284=22*71 だから、 σ(220)=7*6*12=504, σ(284)=7*72=504 となり、σ(220)-220=284, σ(284)-284=220 となる。 


Jun. 27, 2009. Tomohiro Yamada, tyamada@math.kyoto-u.ac.jp

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